またうつという病気は
認めたくないという傾向もありましょうね。そうですね。
それは当然の気持ちともいえますけれども
なんとか受診をして頂く事が非常に重要。
つまりまずそれを疑う事が大きなポイントだと思います。
冒頭のAさんのケースに戻りたいのですが
うつ病にも認知症にも見える。
私どもには分かりませんがどう判断しましょうか?
まずこちらには先ほどのAさんの主な症状であった意欲の低下
もの忘れをするという事があります。
これらは実はうつ病でも認知症でも
共通して出てくる症状といえます。
しかしAさんの場合にはうつ病と考えていいと思います。
Aさんはうつ病と判断される。その理由は?
いくつかポイントはございますがAさんの場合には
まず同じくもの忘れをするといっても
うつ病の場合には仮性認知症という言い方をして
これは治療によってもよくなるという事があります。
つまり本当にもの忘れしているのではなくて
ぼ~っとしていたり注意力が落ちたり
あるいは本当は忘れていないものが
取り出せないといったような症状と考えられます。
もう一つはAさんの場合には
眠れないという事がありましたが
眠れないというのがずっと続くという症状があると
これはうつ病を疑う。
つまりこの場合に大きく
認知症の場合には眠れないというよりは
むしろ眠らないで徘徊をしたり
それで家族が困ったりという事がありますが
うつ病の場合には眠れない事を
本人が非常につらいと感じるという事があります。
なるほどね。また長いですよね1か月以上。Aさんの場合も
1か月以上眠れないでいるという事がありました。
さて3つ目ですが
退職をされた職場を離れられた。
お連れ合いが亡くなったといった事がございました。
見きわめのポイントに挙げられる理由はどういう事ですか?
これらの事はいわゆる喪失体験と呼ばれるもの。
つまり何かを失うという事ですが
これらの何らかのきっかけとなるような出来事があって
そのあとに続けてうつ病の症状が出てくる。
認知症の場合にはそういった
明らかな喪失体験がきっかけというよりは
いつとはなしにもの忘れが進行して
気がつかれるという事があるので経過を見ると
違いが見えてくる場合が多いです。
なるほど。3つの要素挙げて頂きました。
うつか認知症か見きわめのポイントですが
なかなか難しい事は難しいですよね。
もの忘れなどは例えば
認知症の人のもの忘れの特徴とうつの人のもの忘れの特徴を
もうちょっと教えて頂けますか?
特に認知症の方というのはひどいもの忘れをしていても
なかなか自分ではそれを感じない。
つまりけろっとしていたり周りは困って指摘するけども
本人はどうとも思わないという事もあります。